――調子が狂う。
Crazy
我が儘で、言いたい放題で…でも、言葉に説得力があって、優しくて――。
コドモとオトナの両極端な顔を見せるヒトだと思う。
「おはよ、デスティニー!」
「あ、あぁ…」
この世界に上手く馴染めないオレにも分け隔てなく笑いかけてくれる。
これも、この世界でのキャリアのなせる技なのだろうか。
…そう思うと不思議でもある。
見た目も言動も、このヒトは自分より幼く見えるから。
「…おーい、デスティニー?」
「え?ど、どうかしたか?」
「ううん、なんか心ここにあらずだったから」
「そ、そんなことッ」
「動かないで」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、身動きが取れなくなる。
次の瞬間、ぐっ、と、身体が、顔が、近づいて。
柔らかい手がオレの頬に触れる。
至近距離にある、彼の顔。
突然の出来事に、一気に心拍数が上がった。
「な、なっ、なっ…!?」
「…んー、やっぱり少し熱い、かな」
「…へ?」
「デスティニーがぼーっとしてるなんて珍しいからさ。
風邪でもひいて、熱あるのかと思って。顔、赤くなってるし」
ふわりと、微笑む。
本当に、無自覚ほど恐いものはない。
その表情は…破壊力が強すぎる。
吐息が近い。微風に揺れる髪が甘く香る。
「ガンダム、さん」
「ひどくなんないうちに休んだ方がいいぞ、無理したらダメだ!」
めっ、と子供を諭すように、鼻先に指が押し当てられる。
その仕草があまりにも可愛くて、無防備で。
「ガンダムさん」
彼の手を掴んで身体ごと引き寄せ、腕の中に閉じ込める――
…って、オレ何やってんだ…!?
「で、ですてぃにー…?」
一気に頭が冷える。
慌てて腕を解いて離れれば、目を丸くしている彼が見えた。
何やってんだオレは――大先輩相手に、男相手に、こんな――…!
「…デスティニー…?」
「あの…その、コレは…ッ!…す、スイマセンでしたッ!!」
弁解の言葉も出ず、頭を下げてその場を立ち去るしか出来なかった。
背を向けて駆け出し、翼を広げて羽撃たく。
言えるわけがない――その瞳が、その優しさが、愛しくて…捕まえたくなっただなんて。
馬鹿なことを考えている。こんなの、男に抱く感情じゃない。
駆け戻った住処で紅い顔をレジェンドにからかわれたので、とりあえず廻し蹴りしておいた。
調子が狂う。
我が侭で、優しくて、子供っぽくて、大人びて。
掴み所がなくて、惑わされる。
どうかしている。
あのひとが、愛しいなんて。
あのひとを、護りたいなんて。
あのひとと、一緒にいたいだなんて。
あの瞳が、眼に焼きついて離れない。
あの香りが、鼻腔をくすぐる感覚が消えない。
抱きしめた身体の柔らかさが、温もりが、まだ腕に残っている。
本当に――どうかしてる。
fin
atogaki
運命→大御所。運命は不幸なくらいがちょうどいい気がする。
短いな。まさにショートストーリィ。
運命は結構ナイーヴだと思うのですよ。
2007/04/06
Crazy
我が儘で、言いたい放題で…でも、言葉に説得力があって、優しくて――。
コドモとオトナの両極端な顔を見せるヒトだと思う。
「おはよ、デスティニー!」
「あ、あぁ…」
この世界に上手く馴染めないオレにも分け隔てなく笑いかけてくれる。
これも、この世界でのキャリアのなせる技なのだろうか。
…そう思うと不思議でもある。
見た目も言動も、このヒトは自分より幼く見えるから。
「…おーい、デスティニー?」
「え?ど、どうかしたか?」
「ううん、なんか心ここにあらずだったから」
「そ、そんなことッ」
「動かないで」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、身動きが取れなくなる。
次の瞬間、ぐっ、と、身体が、顔が、近づいて。
柔らかい手がオレの頬に触れる。
至近距離にある、彼の顔。
突然の出来事に、一気に心拍数が上がった。
「な、なっ、なっ…!?」
「…んー、やっぱり少し熱い、かな」
「…へ?」
「デスティニーがぼーっとしてるなんて珍しいからさ。
風邪でもひいて、熱あるのかと思って。顔、赤くなってるし」
ふわりと、微笑む。
本当に、無自覚ほど恐いものはない。
その表情は…破壊力が強すぎる。
吐息が近い。微風に揺れる髪が甘く香る。
「ガンダム、さん」
「ひどくなんないうちに休んだ方がいいぞ、無理したらダメだ!」
めっ、と子供を諭すように、鼻先に指が押し当てられる。
その仕草があまりにも可愛くて、無防備で。
「ガンダムさん」
彼の手を掴んで身体ごと引き寄せ、腕の中に閉じ込める――
…って、オレ何やってんだ…!?
「で、ですてぃにー…?」
一気に頭が冷える。
慌てて腕を解いて離れれば、目を丸くしている彼が見えた。
何やってんだオレは――大先輩相手に、男相手に、こんな――…!
「…デスティニー…?」
「あの…その、コレは…ッ!…す、スイマセンでしたッ!!」
弁解の言葉も出ず、頭を下げてその場を立ち去るしか出来なかった。
背を向けて駆け出し、翼を広げて羽撃たく。
言えるわけがない――その瞳が、その優しさが、愛しくて…捕まえたくなっただなんて。
馬鹿なことを考えている。こんなの、男に抱く感情じゃない。
駆け戻った住処で紅い顔をレジェンドにからかわれたので、とりあえず廻し蹴りしておいた。
調子が狂う。
我が侭で、優しくて、子供っぽくて、大人びて。
掴み所がなくて、惑わされる。
どうかしている。
あのひとが、愛しいなんて。
あのひとを、護りたいなんて。
あのひとと、一緒にいたいだなんて。
あの瞳が、眼に焼きついて離れない。
あの香りが、鼻腔をくすぐる感覚が消えない。
抱きしめた身体の柔らかさが、温もりが、まだ腕に残っている。
本当に――どうかしてる。
fin
atogaki
運命→大御所。運命は不幸なくらいがちょうどいい気がする。
短いな。まさにショートストーリィ。
運命は結構ナイーヴだと思うのですよ。
2007/04/06
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