ただなんとなく傍にいて
それが当たり前になっていた
傍にいるキミ
ふと空を見上げる。
絵の具を流したような、ライトブルーの空。
きれいだ、と思う。
自分にもきれいだと思える心があったことに気づき、小さく笑みがこぼれた。
「なに笑ってんの?」
ばさばさという羽音と共に、降ってくる声。
黒い翼、黒い機体。漆黒に彩られたMS。
死神と呼ばれる男…デスサイズヘルカスタム。
いつからか、オレの相方というか…そんなポジションにいる存在。
こいつはオレがどこにいてもあっさり見つけ出し、気づけばオレの傍にいる。
オレとは違って人間が出来てて、人の間での立ち回りも上手い。
何だかんだで、オレは結構こいつに助けられている、と思う。
そこまで考えて、また少し笑みが浮かんだ。
「なに笑ってんの、ってば」
「…いや」
助けられるのが当たり前になっていた。
オレがいろいろやらかしたときも、いつもこいつがフォローしてくれた。
「まったく、出かけるならひとこと言ってからにしろよ」
「…どうせすぐに見つけてくれるんだろう?」
「そうだけどさぁ…」
付き合い長いしな、と、複雑な表情で頬をかく。
見慣れたその仕草も、なぜか今は大切なものに感じる。
そう思う、そう思える心をくれたのも…きっと、コイツだ。
「あ、今日は自爆してないよな?」
「まだな」
「まだ、って…。…お、おい、ウイング!?」
翼を広げ、蒼空へ向かう。
見下ろした世界は、平和だった。
MSなどという存在があるにもかかわらず、戦争らしきことは行われていない。
誰もがただ、幸せそうに、日常を過ごす。
自分たちが元いた場所からは、想像もつかないような。
そう、いつ誰がいなくなるか、分からない世界からは…。
「――ウイングっ!やっと追いついた!」
「…なぁ、デスサイズ」
「ん?」
後ろを振り向くことなく語りかける。
消えてしまわないかと、不安になりながら。
「…平和だな」
「え?…あぁ、そうだな」
放っておけば血に塗れたまま壊れていきそうな日々が、この地に来て一変した。
人の死などとは何の縁もない、平和すぎるほど平和な日々。
ぜんぜん違う空気が落ち着かなくて、自爆したりもした。
でも、今はこの世界が、この空気が、結構気に入っている。
デスサイズが、笑っていられるから。
「…こういう日々も悪くはない…な」
「ウイング?」
デスサイズは、たまにすごく辛そうな顔をする事があった。
仕事だと分かっていても、悲しいな、と。
複雑な、泣き笑いの表情を浮かべていた。
死神と呼ばれる存在の、苦痛。
普段は明るいデスサイズだけに、その落差が見ているほうも悲しかった。
辛そうな顔のデスサイズは見たくなかった。
笑っていてほしいと思う自分がいた。
大切だから。必要だから。――好きだから。
「――デスサイズ」
翼を翻して、彼の正面に立つ。
少し驚いたような瞳が見えて。
抱きしめる。
計り知れない感謝と、溢れんばかりの想いを込めて。
強く、優しく。
「う、ウイングっ!?」
「ありがとう」
「え、な、何?何なんだよ、いきなり!?」
デスサイズがいなかったら、オレはきっと心すら失っていた。
空をきれいだと思うことも、悲しみに胸が痛むことも、誰かを愛しいと思うことも、なかった。
かつては必要ないと思っていたことが今、平和な日々の中で、とても大切だと思える。
「ば、馬鹿、離せってば、ウイング!何考えてんだよッ!」
「デスサイズ」
大切で、大切で、かけがえのないひとに、笑っていてほしいと思う気持ち。
それを教えてくれた、オレの大切な人。
「オレは」
デスサイズが笑っていてくれるから、それでいい。
デスサイズがオレの傍にいるから、それでいい。
それだけで、オレは。
「幸せだ」
「…何なんだよ、ばか」
ただなんとなく傍にいて
それが当たり前で
意識せずに頼っていて
いつの間にかかけがえがなくなっていたキミ
たくさんのものをもらったから
少しずつ返していこう
心に溢れるこの想いで
だからずっと 傍に
fin
atogaki
ウイング×デスサイズ、でした。Not擬人化。かっ、書き辛ぇぇぇ――!!(叫
噛み合ってるよーで噛み合ってない、でも噛み合ってる。そんなふたり。
ラストも結局ウイング自己完結だけど、デスサイズはなんとなく分かってます。
いろんな意味で理想的なカンジ。お幸せに。 …続くかも?(ぉ
2006/05/28
それが当たり前になっていた
傍にいるキミ
ふと空を見上げる。
絵の具を流したような、ライトブルーの空。
きれいだ、と思う。
自分にもきれいだと思える心があったことに気づき、小さく笑みがこぼれた。
「なに笑ってんの?」
ばさばさという羽音と共に、降ってくる声。
黒い翼、黒い機体。漆黒に彩られたMS。
死神と呼ばれる男…デスサイズヘルカスタム。
いつからか、オレの相方というか…そんなポジションにいる存在。
こいつはオレがどこにいてもあっさり見つけ出し、気づけばオレの傍にいる。
オレとは違って人間が出来てて、人の間での立ち回りも上手い。
何だかんだで、オレは結構こいつに助けられている、と思う。
そこまで考えて、また少し笑みが浮かんだ。
「なに笑ってんの、ってば」
「…いや」
助けられるのが当たり前になっていた。
オレがいろいろやらかしたときも、いつもこいつがフォローしてくれた。
「まったく、出かけるならひとこと言ってからにしろよ」
「…どうせすぐに見つけてくれるんだろう?」
「そうだけどさぁ…」
付き合い長いしな、と、複雑な表情で頬をかく。
見慣れたその仕草も、なぜか今は大切なものに感じる。
そう思う、そう思える心をくれたのも…きっと、コイツだ。
「あ、今日は自爆してないよな?」
「まだな」
「まだ、って…。…お、おい、ウイング!?」
翼を広げ、蒼空へ向かう。
見下ろした世界は、平和だった。
MSなどという存在があるにもかかわらず、戦争らしきことは行われていない。
誰もがただ、幸せそうに、日常を過ごす。
自分たちが元いた場所からは、想像もつかないような。
そう、いつ誰がいなくなるか、分からない世界からは…。
「――ウイングっ!やっと追いついた!」
「…なぁ、デスサイズ」
「ん?」
後ろを振り向くことなく語りかける。
消えてしまわないかと、不安になりながら。
「…平和だな」
「え?…あぁ、そうだな」
放っておけば血に塗れたまま壊れていきそうな日々が、この地に来て一変した。
人の死などとは何の縁もない、平和すぎるほど平和な日々。
ぜんぜん違う空気が落ち着かなくて、自爆したりもした。
でも、今はこの世界が、この空気が、結構気に入っている。
デスサイズが、笑っていられるから。
「…こういう日々も悪くはない…な」
「ウイング?」
デスサイズは、たまにすごく辛そうな顔をする事があった。
仕事だと分かっていても、悲しいな、と。
複雑な、泣き笑いの表情を浮かべていた。
死神と呼ばれる存在の、苦痛。
普段は明るいデスサイズだけに、その落差が見ているほうも悲しかった。
辛そうな顔のデスサイズは見たくなかった。
笑っていてほしいと思う自分がいた。
大切だから。必要だから。――好きだから。
「――デスサイズ」
翼を翻して、彼の正面に立つ。
少し驚いたような瞳が見えて。
抱きしめる。
計り知れない感謝と、溢れんばかりの想いを込めて。
強く、優しく。
「う、ウイングっ!?」
「ありがとう」
「え、な、何?何なんだよ、いきなり!?」
デスサイズがいなかったら、オレはきっと心すら失っていた。
空をきれいだと思うことも、悲しみに胸が痛むことも、誰かを愛しいと思うことも、なかった。
かつては必要ないと思っていたことが今、平和な日々の中で、とても大切だと思える。
「ば、馬鹿、離せってば、ウイング!何考えてんだよッ!」
「デスサイズ」
大切で、大切で、かけがえのないひとに、笑っていてほしいと思う気持ち。
それを教えてくれた、オレの大切な人。
「オレは」
デスサイズが笑っていてくれるから、それでいい。
デスサイズがオレの傍にいるから、それでいい。
それだけで、オレは。
「幸せだ」
「…何なんだよ、ばか」
ただなんとなく傍にいて
それが当たり前で
意識せずに頼っていて
いつの間にかかけがえがなくなっていたキミ
たくさんのものをもらったから
少しずつ返していこう
心に溢れるこの想いで
だからずっと 傍に
fin
atogaki
ウイング×デスサイズ、でした。Not擬人化。かっ、書き辛ぇぇぇ――!!(叫
噛み合ってるよーで噛み合ってない、でも噛み合ってる。そんなふたり。
ラストも結局ウイング自己完結だけど、デスサイズはなんとなく分かってます。
いろんな意味で理想的なカンジ。お幸せに。 …続くかも?(ぉ
2006/05/28
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