目覚めは、見渡す限りの白の中。
融けゆく想い
(…ここは、どこだ?)
視界一面に白い靄がかかっていて、何も見えない。
足元の感覚も、まるで雲の上のように頼りない。
身体が重いのか、軽いのかさえ分からない。
ふと、左眼に感じる違和感。
そっと触れると、そこにあったはずの眼帯も火傷も、なくて。
よく見れば石化されたはずの右腕も元に戻っていた。
(一体、どうなってるんだ)
風で靄を吹き飛ばそうとしても、何も起こらない。
振るった手は、空気を掻くだけ。
(能力が…使えない?)
訳がわからなくなって、必死で記憶の糸を辿る。
北海道。湖。アクロの心臓。
叶太輔。戦い。炎。牧師。
石化。波動。殺意。痛み。
禍々しい黒光。広瀬。
飛び散るアクロの心臓。
過去の幻影。
巻き起こる風――。
そして、途切れた記憶。
(…そうか)
オレは、死んだんだ。
心臓に触れて、心の穴に負けて。
自分の能力を、自分にぶつけて。
(そしたら…ここは、あの世ってことになんのかな)
何も見えない。何に触れる感覚もない。
真っ白な世界で、ひとりぼっちだった。
「…寂しい」
口を突いて出た言葉に、驚く。
こんな言葉を口にしたのはどれぐらいぶりだろう。
寂しくて仕方がない。
身体の中心に穴が空いてしまったようだ。
会いたい。
逢いたい。
…誰に?
「…由良…」
由良、匠。
好きだった。とても。
言葉にすることはなかったけど。
逢いたい。
あいたいよ。
由良。
「…由良ぁ…」
ぽたぽたと、涙がこぼれた。
泣くのなんてどれぐらいぶりだろう。
もう会えないのかな。
嫌だよ、ねぇ、由良。
好きなんだよ。
今オレ、お前の笑顔しか思い出せないよ。
由良、大好きだよ。
他の誰よりも。
「…すき…匠…」
…ずっと、一緒にいたかった…。
ぱしんっ
小さな、音。
世界が、弾ける。
眼前に広がる靄も、足元の雲も一気に掻き消えて。
見下ろせば、そこには人類の街が広がっていた。
そして重力――否、何か得体の知れない力に引かれて、地上へと落ちていく。
魂なんてものに物理法則が通用するとも思えないが、落ちていくスピードは相当で。
「―――ッ…!」
地面にぶつかる、そう思った瞬間、急にスピードが遅くなり…俺は無事に足から着地した。
「…ここは?」
見覚えのない街――。
何の変哲もない、人間の街だ。
「…なんで、こんな所に…?」
分かっているのは、自分が周囲の人間には見えていないということ。
先程から数人が自分の体を通り抜けている。
誰もここに突っ立っている自分に気付く様子もない。
幽霊はこんな気分なのだろうか、などと想像してみる。
身体が、宙に浮きそうなほど軽い。
足が地から離れないように、ゆっくりと歩を進める。
「…あ」
不意に視界に入ったのは、見慣れた蓬髪の男。
「由…良…?」
最後に見たときとは、違う姿の彼。
生きている。
生きていてくれた。
だけどそれは、彼には自分が見えないということ。
自分の声は、彼には届かないということ。
頭では分かってるはずなのに。
それでも、彼を呼ばずには、追わずには、いられなくて。
「由良、由良ッ…!」
追いかける。
人込みの中で、見失いそうな背中を。
あと少し、あと少し――。
「…っ」
――身体が、重なる。
彼の心と、自分の心が、繋がる。
自分の中に、何かが流れ込んでくるのが分かる。
『モリヲの髪、めっちゃ柔らけー。オンナみたい』
『…寝てたらカワイーのに…』
『モリヲはさ、何色が好き?』
『アクロの心臓の回収が終わったら話が…。…悪い、何でもない』
『…もう、逢えないけど…オレ、お前のこと――』
記憶。
由良の想い出。
…オレへの、想い。
あぁ。
「オレ…由良に、こんなに想われてたんだ…」
嬉しさが、涙になる。
暖かい想いが、溢れて。
優しい想いに、包まれて。
少しずつ意識が遠くなる。
愛しさに融けて、ひとつになる。
ずっとずっと、側にいるよ。
fin
atogaki
由良森・森尾死亡ルートトゥルーED『融けゆく想い』です(ぇ
嘘です。死後ネタ・捏造120%…。INTERMISSION直後くらいを妄想してください。
森尾がものスゴい乙女です;;もはや別人…(´д`;;)
世間が森由良・由良受けだろうと、fcsは由良森・森尾受けを応援します。(ぉ
あの街に引き寄せられたのは、由良と森尾の想いが惹きあったから…ということにしてください。
2006/03/20
融けゆく想い
(…ここは、どこだ?)
視界一面に白い靄がかかっていて、何も見えない。
足元の感覚も、まるで雲の上のように頼りない。
身体が重いのか、軽いのかさえ分からない。
ふと、左眼に感じる違和感。
そっと触れると、そこにあったはずの眼帯も火傷も、なくて。
よく見れば石化されたはずの右腕も元に戻っていた。
(一体、どうなってるんだ)
風で靄を吹き飛ばそうとしても、何も起こらない。
振るった手は、空気を掻くだけ。
(能力が…使えない?)
訳がわからなくなって、必死で記憶の糸を辿る。
北海道。湖。アクロの心臓。
叶太輔。戦い。炎。牧師。
石化。波動。殺意。痛み。
禍々しい黒光。広瀬。
飛び散るアクロの心臓。
過去の幻影。
巻き起こる風――。
そして、途切れた記憶。
(…そうか)
オレは、死んだんだ。
心臓に触れて、心の穴に負けて。
自分の能力を、自分にぶつけて。
(そしたら…ここは、あの世ってことになんのかな)
何も見えない。何に触れる感覚もない。
真っ白な世界で、ひとりぼっちだった。
「…寂しい」
口を突いて出た言葉に、驚く。
こんな言葉を口にしたのはどれぐらいぶりだろう。
寂しくて仕方がない。
身体の中心に穴が空いてしまったようだ。
会いたい。
逢いたい。
…誰に?
「…由良…」
由良、匠。
好きだった。とても。
言葉にすることはなかったけど。
逢いたい。
あいたいよ。
由良。
「…由良ぁ…」
ぽたぽたと、涙がこぼれた。
泣くのなんてどれぐらいぶりだろう。
もう会えないのかな。
嫌だよ、ねぇ、由良。
好きなんだよ。
今オレ、お前の笑顔しか思い出せないよ。
由良、大好きだよ。
他の誰よりも。
「…すき…匠…」
…ずっと、一緒にいたかった…。
ぱしんっ
小さな、音。
世界が、弾ける。
眼前に広がる靄も、足元の雲も一気に掻き消えて。
見下ろせば、そこには人類の街が広がっていた。
そして重力――否、何か得体の知れない力に引かれて、地上へと落ちていく。
魂なんてものに物理法則が通用するとも思えないが、落ちていくスピードは相当で。
「―――ッ…!」
地面にぶつかる、そう思った瞬間、急にスピードが遅くなり…俺は無事に足から着地した。
「…ここは?」
見覚えのない街――。
何の変哲もない、人間の街だ。
「…なんで、こんな所に…?」
分かっているのは、自分が周囲の人間には見えていないということ。
先程から数人が自分の体を通り抜けている。
誰もここに突っ立っている自分に気付く様子もない。
幽霊はこんな気分なのだろうか、などと想像してみる。
身体が、宙に浮きそうなほど軽い。
足が地から離れないように、ゆっくりと歩を進める。
「…あ」
不意に視界に入ったのは、見慣れた蓬髪の男。
「由…良…?」
最後に見たときとは、違う姿の彼。
生きている。
生きていてくれた。
だけどそれは、彼には自分が見えないということ。
自分の声は、彼には届かないということ。
頭では分かってるはずなのに。
それでも、彼を呼ばずには、追わずには、いられなくて。
「由良、由良ッ…!」
追いかける。
人込みの中で、見失いそうな背中を。
あと少し、あと少し――。
「…っ」
――身体が、重なる。
彼の心と、自分の心が、繋がる。
自分の中に、何かが流れ込んでくるのが分かる。
『モリヲの髪、めっちゃ柔らけー。オンナみたい』
『…寝てたらカワイーのに…』
『モリヲはさ、何色が好き?』
『アクロの心臓の回収が終わったら話が…。…悪い、何でもない』
『…もう、逢えないけど…オレ、お前のこと――』
記憶。
由良の想い出。
…オレへの、想い。
あぁ。
「オレ…由良に、こんなに想われてたんだ…」
嬉しさが、涙になる。
暖かい想いが、溢れて。
優しい想いに、包まれて。
少しずつ意識が遠くなる。
愛しさに融けて、ひとつになる。
ずっとずっと、側にいるよ。
fin
atogaki
由良森・森尾死亡ルートトゥルーED『融けゆく想い』です(ぇ
嘘です。死後ネタ・捏造120%…。INTERMISSION直後くらいを妄想してください。
森尾がものスゴい乙女です;;もはや別人…(´д`;;)
世間が森由良・由良受けだろうと、fcsは由良森・森尾受けを応援します。(ぉ
あの街に引き寄せられたのは、由良と森尾の想いが惹きあったから…ということにしてください。
2006/03/20
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