感覚など、とうに消えた。
心など、とうに壊れた。
それでも、記憶は亡くさない。
護りたかったものの、想い出を忘れない。
守護者‐キセキの護り手‐
自らをファルガイア環境再生システム・ユグドラシルの中核デバイスとして組み込んで
どれほどの時が流れたのだろう。
100年?200年?あるいは1000年以上が流れたのかもしれない。
電界25次元に長いこといると、時間の概念が曖昧になる。
如何に俺の想い出を含んでいるとはいえ、再生されたファルガイアの生命力は失われかけていた。
守護獣の力は消え去り、砂の海が全てを飲み込んでいった。
クライヴを始めとする研究者たち、ギャロウズを始めとするバスカーたち。
多くの人々が対策を考えたが、悉く無意味だった。
…俺は、気付いていた。
この星を救うには、ユグドラシルシステムを動かすしかないと。
世界を救う…なんて、柄じゃない。
俺は、護りたいものを護るだけのことだった。
俺を仲間だと言った馬鹿どもを。そして、その未来を。
ユグドラシルのメインジェネレータはベアトリーチェに奪われた。
けれどそれ以上のエネルギーを持つものを、ヒトは持っている。
ユグドラシルジェネレータもガイアのうねりも失ったベアトリーチェが
ネガ・ファルガイア創造のエネルギーとして使おうとしたもの。
…すなわち、想い出。
世界の雛形(ファルガイアサンプル)、アダム・カドモンたる俺の身の内に眠るのはこの星の想い出。
それを使えばこの星の人々の想い出全てよりも遥かに強いエネルギーとなる。
さらにそのエネルギーとシステムそのものをを俺が制御すれば環境の再生など容易いこと。
俺はそれを誰にも言わなかった。
この方法は、俺自身をユグドラシルシステムのデバイスとして組み込むことになるから。
それは同時に、システムの一部と化し『俺』ではなくなるということだから。
そんなことを、あいつらが許すはずが無かったから。
ひとりユグドラシルのメインシステム前に立ったときも、恐怖は無かった。
この身がどうなるかは分からなくても。
これ以上の想い出を積み重ねることができなくなることだけは確かでも。
あいつらが想い出を重ねていける未来を作れるのが、嬉しかったから。
銀の左腕(アガートラーム)を媒介に、メインシステムへとアクセスした。
俺自身をエネルギージェネレータ、そして中枢デバイスとするように。
肉体ごとデータ化されてユグドラシルに飲み込まれ、システムに組み込まれて引くのが分かった。
環境再生プログラム始動後、ファルガイアは昔のような青と緑の星へと戻っていった。
荒野と砂の海が広がるファルガイアは、もはや人々の夢の中に現れるだけだった。
電界25次元、ヒトの夢と繋がる世界。
そこにたまに、自分の姿が映ることがあった。
その夢を見ているのはクライヴであったり、ギャロウズであったり、ヴァージニアであったり。
必ず目覚めた後、そいつは泣く。
電気信号の海で見る夢に、自分の最後の手紙を読んだときのあいつらの姿がある。
俺のことを馬鹿だ馬鹿だと罵りながら、子供のように泣く姿。
それでも、後悔はしていない。
護りたかったものを、護れたのだから。
俺が電界25次元に写ることは無くなった。
俺の姿を知るものは、みんな遠くへ旅立ってしまった。
データ化された身では、死ぬことすらままならない。
あいつらと同じ場所に行くことは、できない。
寂しいとは、思わない。
辛いとは、思わない。
長い長い年月を経る中で、俺の心は壊れてしまっていた。
それでも、護りたいものがあることは、忘れなかった。
大切な仲間の想い出は、失わなかった。
あいつらがいなくても、あいつらの血族はいる。
継ぐものを、未来を、護ることができる。
俺が守りたかったのは、世界なんかじゃない。
俺が守りたかったのは、共に歩んだ仲間たちと、その未来。
fin
atogaki
奇跡を司る守護獣の話を考えるうちに思いついた。あんまり後悔していない。
ジェットは世界の雛形だけど、人間であって欲しいとです。
キセキには二つの意味を。
仲間の軌跡と奇跡を司るガーディアン(人間)。
それを守る者はキセキの守護者、と。
…こじつけすぎ?
2007/04/27
心など、とうに壊れた。
それでも、記憶は亡くさない。
護りたかったものの、想い出を忘れない。
守護者‐キセキの護り手‐
自らをファルガイア環境再生システム・ユグドラシルの中核デバイスとして組み込んで
どれほどの時が流れたのだろう。
100年?200年?あるいは1000年以上が流れたのかもしれない。
電界25次元に長いこといると、時間の概念が曖昧になる。
如何に俺の想い出を含んでいるとはいえ、再生されたファルガイアの生命力は失われかけていた。
守護獣の力は消え去り、砂の海が全てを飲み込んでいった。
クライヴを始めとする研究者たち、ギャロウズを始めとするバスカーたち。
多くの人々が対策を考えたが、悉く無意味だった。
…俺は、気付いていた。
この星を救うには、ユグドラシルシステムを動かすしかないと。
世界を救う…なんて、柄じゃない。
俺は、護りたいものを護るだけのことだった。
俺を仲間だと言った馬鹿どもを。そして、その未来を。
ユグドラシルのメインジェネレータはベアトリーチェに奪われた。
けれどそれ以上のエネルギーを持つものを、ヒトは持っている。
ユグドラシルジェネレータもガイアのうねりも失ったベアトリーチェが
ネガ・ファルガイア創造のエネルギーとして使おうとしたもの。
…すなわち、想い出。
世界の雛形(ファルガイアサンプル)、アダム・カドモンたる俺の身の内に眠るのはこの星の想い出。
それを使えばこの星の人々の想い出全てよりも遥かに強いエネルギーとなる。
さらにそのエネルギーとシステムそのものをを俺が制御すれば環境の再生など容易いこと。
俺はそれを誰にも言わなかった。
この方法は、俺自身をユグドラシルシステムのデバイスとして組み込むことになるから。
それは同時に、システムの一部と化し『俺』ではなくなるということだから。
そんなことを、あいつらが許すはずが無かったから。
ひとりユグドラシルのメインシステム前に立ったときも、恐怖は無かった。
この身がどうなるかは分からなくても。
これ以上の想い出を積み重ねることができなくなることだけは確かでも。
あいつらが想い出を重ねていける未来を作れるのが、嬉しかったから。
銀の左腕(アガートラーム)を媒介に、メインシステムへとアクセスした。
俺自身をエネルギージェネレータ、そして中枢デバイスとするように。
肉体ごとデータ化されてユグドラシルに飲み込まれ、システムに組み込まれて引くのが分かった。
環境再生プログラム始動後、ファルガイアは昔のような青と緑の星へと戻っていった。
荒野と砂の海が広がるファルガイアは、もはや人々の夢の中に現れるだけだった。
電界25次元、ヒトの夢と繋がる世界。
そこにたまに、自分の姿が映ることがあった。
その夢を見ているのはクライヴであったり、ギャロウズであったり、ヴァージニアであったり。
必ず目覚めた後、そいつは泣く。
電気信号の海で見る夢に、自分の最後の手紙を読んだときのあいつらの姿がある。
俺のことを馬鹿だ馬鹿だと罵りながら、子供のように泣く姿。
それでも、後悔はしていない。
護りたかったものを、護れたのだから。
俺が電界25次元に写ることは無くなった。
俺の姿を知るものは、みんな遠くへ旅立ってしまった。
データ化された身では、死ぬことすらままならない。
あいつらと同じ場所に行くことは、できない。
寂しいとは、思わない。
辛いとは、思わない。
長い長い年月を経る中で、俺の心は壊れてしまっていた。
それでも、護りたいものがあることは、忘れなかった。
大切な仲間の想い出は、失わなかった。
あいつらがいなくても、あいつらの血族はいる。
継ぐものを、未来を、護ることができる。
俺が守りたかったのは、世界なんかじゃない。
俺が守りたかったのは、共に歩んだ仲間たちと、その未来。
fin
atogaki
奇跡を司る守護獣の話を考えるうちに思いついた。あんまり後悔していない。
ジェットは世界の雛形だけど、人間であって欲しいとです。
キセキには二つの意味を。
仲間の軌跡と奇跡を司るガーディアン(人間)。
それを守る者はキセキの守護者、と。
…こじつけすぎ?
2007/04/27
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