…ドォォォン!!
遠くから響く爆発音。
それはすっかり聞きなれたものであり。
またか、と死神は小さく溜め息をついた。
05.たとえば誰かを好きだと思うこと
「――っとに…いい加減にしろよな、ウイング」
「………」
ホワイトベースの一室、通称『W組』と呼ばれるお騒がせ5人組が居候している部屋。
その片隅で、さきほど得意技をやらかした『自爆魔』ウイングに治療を施す。
このコロニーにおいて、『ウイングガンダムゼロカスタムの自爆』は日常茶飯事で。
だからといって、こうちょくちょく自爆されたのでは巻き込まれた人々はたまったものではない。
そして毎回巻き込まれた人々へのフォローとウイングの治療をすることになる自分も――
まぁ、ウイングと同じくやや他人に迷惑なマイペースな性格と自覚しているが、
こうも毎度毎度迷惑行為に走られると、そりゃあ愚痴の一つも出てこようというものだった。
「はい、終わり」
ぱたんと救急箱の蓋を閉める。
…MSのはずなのにどうやって救急箱の中のモノで治療してるかとかいうのはこの際ツッコんではいけない。
「…すまない」
「謝る前にその自爆癖なんとかしてくれ…」
はぁーっと盛大な溜め息。
どうにかしたいとは思うものの、どうにもならないのが他人の癖。
特にこんなハタ迷惑な癖はとっとと直してもらいたいのだが、
本人に悪気もへったくれもないのではどうしようもなく。
それでも自爆するのはやめて欲しかった。それはもう、切実に。
「…ウイング」
「何だ?」
「ホント、あんまり自爆するのやめてくれよ…」
「…デスサイズ?」
息が苦しくなってきて、俯く。
いくら日常茶飯事とはいえ。いくら慣れてしまったとはいえ。
心配なのだ、彼のことが。ウイングのことが。
――大切な、存在だから。
「オレ…さ、けっこー、辛いんだよ?お前が、傷つくの」
分かってくれるとは、思わないけれど。
いつからか、いつだって近くにいるようになった存在。
いるのがあたりまえで、いない日々なんてありえない、存在。
それが、どんなに大切か…なんて。
「だから、さ。もーちょい、自分のコト大切にしてくれよ」
もし失ったら、なんか考えたくもないんだから。
「オレ、は、ウイングが…大切、だから」
あぁ、言ってしまった。
声が震えている。格好悪い…。
「デスサイズ」
伏せた顔を上げられずにいると、そのままの体制でぐっと抱き寄せられて。
足掻く間もなく、ウイングの腕の中に納まってしまい。
「っな、う、ウイングっ!?」
「…オレは…」
「は…なせッ!ウイング、放せっってば!」
「…デスサイズ」
「ウ…イング…っ」
逃れようと腕に力を込める――が、名前を呼ばれただけで、力が抜けていく。
弱々しく多少裏返った声。…女の子の、泣き声みたいな。
意味を成さない抵抗をよそに、抱き締められる。強く――強く――。
「や…だっ、ウイング…苦し…」
「――お前が、教えてくれたんだ」
「…え?」
「平和なのが、幸せだということ。平凡な日々の喜び。こころ、感情、――大切な想い」
「それが失われることを恐れ、護りたいと思う気持ち」
「…誰かを、好きで仕方ないと、思うことを」
ウイングの顔は見えない。ただ、少し震えているのを感じる。
…あぁ、震えているのは…自分か。
この次にウイングが紡ぐ言葉に怯えながら――期待している、自分。
「――大切なんだ。デスサイズ、お前が」
強く、強く、強い、抱擁。
それなのに、痛みも苦しみも感じなくて。
むしろ心地よささえ感じて。
逃がさないで。離れないで。ずっとここにいて。
「「お前が、好き」」
重なったのは、声じゃなく、こころ。
『想い』を知った。
それは、『大切な存在を護りたいと思う』こころ。
それは、『誰かを好きだと思う』こころ。
何ものにも負けない、強い気持ち。
愛情。
陳腐な言葉。
でもきっと、いちばん近い言葉。
それをずっと越えたところにある、この想いに。
fin
atogaki
15000HIT記念フリー@FC劇場・ウイデス小説。
FC劇場…持って行く人いるのか?(汗
デスサイズが乙女つーか別人…あ、別MSか(笑
お持ち帰りは自由ですが、サイト掲載の際にはご一報あれ( ´ω`)ノ
遠くから響く爆発音。
それはすっかり聞きなれたものであり。
またか、と死神は小さく溜め息をついた。
05.たとえば誰かを好きだと思うこと
「――っとに…いい加減にしろよな、ウイング」
「………」
ホワイトベースの一室、通称『W組』と呼ばれるお騒がせ5人組が居候している部屋。
その片隅で、さきほど得意技をやらかした『自爆魔』ウイングに治療を施す。
このコロニーにおいて、『ウイングガンダムゼロカスタムの自爆』は日常茶飯事で。
だからといって、こうちょくちょく自爆されたのでは巻き込まれた人々はたまったものではない。
そして毎回巻き込まれた人々へのフォローとウイングの治療をすることになる自分も――
まぁ、ウイングと同じくやや他人に迷惑なマイペースな性格と自覚しているが、
こうも毎度毎度迷惑行為に走られると、そりゃあ愚痴の一つも出てこようというものだった。
「はい、終わり」
ぱたんと救急箱の蓋を閉める。
…MSのはずなのにどうやって救急箱の中のモノで治療してるかとかいうのはこの際ツッコんではいけない。
「…すまない」
「謝る前にその自爆癖なんとかしてくれ…」
はぁーっと盛大な溜め息。
どうにかしたいとは思うものの、どうにもならないのが他人の癖。
特にこんなハタ迷惑な癖はとっとと直してもらいたいのだが、
本人に悪気もへったくれもないのではどうしようもなく。
それでも自爆するのはやめて欲しかった。それはもう、切実に。
「…ウイング」
「何だ?」
「ホント、あんまり自爆するのやめてくれよ…」
「…デスサイズ?」
息が苦しくなってきて、俯く。
いくら日常茶飯事とはいえ。いくら慣れてしまったとはいえ。
心配なのだ、彼のことが。ウイングのことが。
――大切な、存在だから。
「オレ…さ、けっこー、辛いんだよ?お前が、傷つくの」
分かってくれるとは、思わないけれど。
いつからか、いつだって近くにいるようになった存在。
いるのがあたりまえで、いない日々なんてありえない、存在。
それが、どんなに大切か…なんて。
「だから、さ。もーちょい、自分のコト大切にしてくれよ」
もし失ったら、なんか考えたくもないんだから。
「オレ、は、ウイングが…大切、だから」
あぁ、言ってしまった。
声が震えている。格好悪い…。
「デスサイズ」
伏せた顔を上げられずにいると、そのままの体制でぐっと抱き寄せられて。
足掻く間もなく、ウイングの腕の中に納まってしまい。
「っな、う、ウイングっ!?」
「…オレは…」
「は…なせッ!ウイング、放せっってば!」
「…デスサイズ」
「ウ…イング…っ」
逃れようと腕に力を込める――が、名前を呼ばれただけで、力が抜けていく。
弱々しく多少裏返った声。…女の子の、泣き声みたいな。
意味を成さない抵抗をよそに、抱き締められる。強く――強く――。
「や…だっ、ウイング…苦し…」
「――お前が、教えてくれたんだ」
「…え?」
「平和なのが、幸せだということ。平凡な日々の喜び。こころ、感情、――大切な想い」
「それが失われることを恐れ、護りたいと思う気持ち」
「…誰かを、好きで仕方ないと、思うことを」
ウイングの顔は見えない。ただ、少し震えているのを感じる。
…あぁ、震えているのは…自分か。
この次にウイングが紡ぐ言葉に怯えながら――期待している、自分。
「――大切なんだ。デスサイズ、お前が」
強く、強く、強い、抱擁。
それなのに、痛みも苦しみも感じなくて。
むしろ心地よささえ感じて。
逃がさないで。離れないで。ずっとここにいて。
「「お前が、好き」」
重なったのは、声じゃなく、こころ。
『想い』を知った。
それは、『大切な存在を護りたいと思う』こころ。
それは、『誰かを好きだと思う』こころ。
何ものにも負けない、強い気持ち。
愛情。
陳腐な言葉。
でもきっと、いちばん近い言葉。
それをずっと越えたところにある、この想いに。
fin
atogaki
15000HIT記念フリー@FC劇場・ウイデス小説。
FC劇場…持って行く人いるのか?(汗
デスサイズが乙女つーか別人…あ、別MSか(笑
お持ち帰りは自由ですが、サイト掲載の際にはご一報あれ( ´ω`)ノ
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